こちらはアメリカのデジタルアーティスト、ビープルが制作した「Everydays: The First 5,000 Days」というデジタルアート作品です。
5,000枚のデジタル画像にを組み合わせて作られていて、おしゃれに見えるこの作品ですが、驚くべきはその価格です。
2021年3月に行われたオークションにて日本円にして約75億円で落札されました。
デジタル画像を組み合わせた作品にとてつもない値段がつきました。
実は、この作品は「NFT」と呼ばれていて、現在、最も高額で落札されたNFTアート作品となっています。
この「NFT」という言葉を最近よく耳にするようになった方もいるのではないでしょうか?
でも何だか難しそうで実態が掴みにくいのも事実です。そこで今回は「NFT」とは何かをかりやすく解説します。
最後までご覧になっていただければ、NFTの大枠が理解できるようになり、近い将来訪れるデジタルの世界をイメージすることができるようになります。
動画でもわかりやすく解説!
Contents
NFTとは何か?
NFTはNon Fungible Token ノン・ファンジブル・トークン の略称で、日本語では「非代替性トークン」と訳すことができます。
非代替性もトークンもよくわからない言葉ですが、まずは「非代替性」についてみていきましょう。
非代替性とは、替えの効かないモノということです。例えば野球ボール自体はたくさんつくることができますよね。
ですからこれはFungible 替えの効くものです。
でもこの野球ボールが、有名な選手が初めて打ったホームランボールで、そこに本人のサインをしてもらったとすると同じモノをつくることはできません。
つまり、その瞬間にNon-Fungible (替えの効かない)ものになるのです。
モノとしては同じ野球ボールだとしても、非代替性が加わると価値が生まれるというわけなのです。
では、このサイン入り野球ボールがNFTかといわれればそうではありません。
「トークン」というところにNFTの大きな特徴があるのです。
トークンとは?
では「トークン」とは何なのでしょうか?
言葉自体はさまざまな文脈で使われることがあり明確な定義はありません。
ただ、仮想通貨業界では一般的に、ブロックチェーン技術をつかってつくられた仮想通貨のことを意味します。
ブロックチェーンについては後ほど解説するので、ここでは「トークン=モノ」くらいの認識で問題ありません。
ですからノン・ファンジブル・トークン NFTとは替えの効かない唯一無二のモノということになります。
NFTの成り立ち
ではなぜNFTが近年急速に注目を集めるようになったのでしょうか?
遡れば、技術が発展したことでモノの「コピー」が可能になりました。
例えば絵画でも、印刷機の機能が向上したことで繊細な筆遣いや色見であっても、それを表現できるようになりました。コピーとして印刷して大量につくることができるようになったのです。
そこから時は経ち、インターネットやパソコンが普及したことで「デジタルデータのコピー」ができるようになります。
このデジタルデータはコピーが特に簡単で、パソコン上でクリックするだけで簡単にコピーすることができます。そのためすぐに、簡単に、それも無限にコピーできてしまう「デジタル作品」は値段がつきにくくなったのです。
そんな中、2017年に登場したのがNFTです。
何がスゴイのかというと、そのデータ自体は今までと同じように簡単にコピーすることができてしまうものの「オリジナルはあくまでこの作品ですよという証明」ができるようになったことなのです。
この「証明」ができるようになったおかげでデジタル作品は無限にコピーできるただのデータではなく、現物のように「有限のデータ」となるのです。
1つしかない作品のオリジナルデータを欲しがる人が2人以上いれば、それを求める人たちによって価格が吊り上がっていくという流れがうまれます。
デジタルコンテンツを取り巻く環境はこれまで「コピーを禁止」して著作権を守ることが基本でした。しかし、NFTがうまれたことで作品の「希少性」に価値を見いだせる新たなデジタルコンテンツの価値が誕生したというわけなのです。
NFTのもつ価値とは?
しかしながら、デジタルデータは複製やコピーが簡単にできてしまうことは皆さんもご存知でしょう。ネット上に出回っている画像や動画はもちろんNFT作品ではありません。
では一体どうやってNFTはその「希少性」を保っているのでしょうか?
そこで使われているのが「ブロックチェーン技術」です。
NFT=デジタル作品という訳ではなく
NFTというのはブロックチェーンを使って希少性を保っているデジタル作品です。
ブロックチェーンとは
では、ブロックチェーンとは一体何なのでしょうか?
その大きな特徴としては「非中央集権的なシステム」ということです。
データをインターネット上に保存しておけるGoogleドライブなどのクラウドサービスと比較して説明します。
GoogleドライブであればGoogleという大企業がそのデータベース自体を管理しています。
大企業ならではの最新のシステムで、データの保存は複数のコンピュータに分散されていますし、エラーが起きれば優秀な社員がすぐ対応に取り掛かります。世界的な大企業ですからユーザーの信頼を落とすようなリスクをとってまで変なことをする必要もないことから安心して利用することができるでしょう。
しかし、そのデータベースを管理しているのはあくまでGoogleです。誰がどのデータを誰に送ったのかを把握して、証明できるのはGoogleだけです。このようにGoogleの管理のもとに成り立つシステム、つまり「中央集権的なシステム」なのです。
実は、こういった中央集権的なシステムには問題点もあります。
悪意ある企業であれば、管理者がサービスを停止させればデータベースの中身は消えてしまうし、管理者の都合によってデータを閲覧したり改ざんすることも不可能ではないでしょう。そのデータ自体がどう扱われているのかを知るのはシステムの管理者のみなのです。
一方で、ブロックチェーンは「非中央集権的なシステム」です。
これを簡単いえば参加者同士で監視しあっているようなシステムです。
誰がどのデータを誰に送ったのかを把握して、証明するのは参加者…つまり僕たちです。
お互いに監視しあっているような状態なので、嘘がつけませんし、情報を消去したり改ざんをすることもできません。
誰に、いつ、いくらでデータを送ったのかまで全ての情報を誰でも見ることができるのです。これがブロックチェーン最大の特徴です。
このブロックチェーンのもつ改ざんできないという非中央集権的な仕組みがあるからこそ、データの一つ一つにIDをつけて管理することができて、コピーできるデータにも「希少性」が生まれるのです。
また、プログラマビリティがあるというのも特徴です。
これはプログラミングを使ってデータに機能や条件をつけることができるという意味です。
例えば「作品が売買されるたびに作者にも収益の一部が還元される」というようなプログラミングです。
絵画のような現実に存在する作品であれば、作者はその作品を販売した時点で収益を得る機会は終わりです。1万円で売った絵が、10年後に1億円になったとしても、作者は1万円しか受け取ることができません。
ですが、先ほどのプログラムが組まれていれば、NFT作品が売買されるたびに作者は手数料を受け取ることができます。1億円の取引がされたときにも作者にしっかりと利益が残るようになるのです。
つまり、プログラマビリティがあることで、NFT作品をつくるアーティストにとってもメリットが生まれるのです。
そして、誰でも自由にNFT作品を出品、取引できるというのも大きな特徴です。
2021年9月には8歳の少年が自由研究にてNFT作品を作成したところ、その作品が何と約240万円で落札されました。
NFTマーケットプレイスを通じて、小学生であってもNFT作品を出品することが可能です。
Open Sea(オープンシー)というニューヨークを拠点としたマーケットプレイスは月間取引数が2021年7月時点で約250億円もあります。これからも益々その数字は伸びていくと個人的には考えています。
日本では「クリプトモール」や「Coincheck NFT」などがあります。
興味がある方は、まずはサイトをのぞいてみると雰囲気が掴めるかと思います。
NFT作品はなぜ高い値段がつくのか?
冒頭でお伝えしたようにNFT作品には時にとてつもない金額がつくことがあります。
一見すると、ただのデジタルデータなのですが…なぜNFT作品は高い価値がつくのかという点についても考察します。
理由は大きく分けて2つです。
1.所有欲を刺激する
1つ目は、所有欲を刺激するという点です。
先ほどお話した通り、ブロックチェーン技術によりNFT作品はオリジナルそのものをコピーしたり改ざんすることはできません。
野球のサインボールと同じように「非代替性」をもった瞬間に、人間の所有欲を掻き立てることになります。
もともと現物の世界でも、なかなか手に入らないフィギュアやレアカードなどのコレクターアイテムも、その「非代替性」から所有したいという欲求に駆り立てられる人たちは多くいました。
古くは絵画や陶芸作品などの1点モノはとてつもない価値がつくことはご存知の通りです。
これがデジタルの世界でも起こり始めているというわけです。
2.取引の透明性
2つ目は、取引の透明性です。
2021年3月、Twitter創業者のジャック・ドーシー氏が「Twitter史上はじめてのツイート」をNFT作品としてオークションに出品します。この作品は約290万ドル、日本円で約3億1500万円で落札されました。
これは「ジャック・ドーシー本人が承認している」ということが価値の源泉となっています。そういった意味では「誰から手に入れたのか」ということも価値に繋がるのです。
そういった背景から、透明な取引を模索してきた芸能、タレント、音楽業界でも、アイドルやアーティスト本人が作品をNFTで販売することが活発になってきました。
さらにはNFTを買った人だけがアクセスできる仕組みも模索されています。
NFTを持っている人だけが参加できるコミュニティや、NFTを持っている人だけが特別扱いをしてもらえるイベントなど…可能性は無限大です。
これもブロックチェーンという革命的な技術があるからこそ証明できるものなのです。
NFTの問題点
このような素晴らしい特徴を持つNFTですが、その問題点についても触れておきます。
NFTの事件のひとつとして「他者の作品を自分の作品と偽ってNFTを販売する」ということがありました。
NFTの販売はオンラインで手続きが行われるため、作品や取引のデータは記録されるし改ざんもできないのですが、その前段階である「正確な本人確認」を行うことが難しいのです。
実際、セルビア人の人気アーティスト、ミロス・ラジコビッチ氏のデジタルポートレートがNFT作品として出品されました。その数は122点、合計550万円相当です。
ところが、ラジコビッチ氏自身はNFT作品を出品していませんでした。これはラジコビッチ氏を名乗る何者かがラジコビッチ氏になりすまし出品していたということです。
その他にも、現在NFT事業者は金融規制の管轄外とされていて、規制や監査などの法整備が整っていません。
そのため、マネーロンダリングなど不正取引の場となってしまうリスクもあります。
複数人のグループが入札を繰り返すことで、価値のないものであっても、意図的に価格を吊り上げることもできてしまいます。
さらに言えばハッキングや盗難などの犯罪に遭ってしまったとしても、その対処方法や監視体制が今のところ整っていません。現在の法律が最新技術のNFTにどこまで対応できるかは未知数です。
NFTには革命的な魅力があるものの、その分多くの問題点を抱えているのも事実です。
だからこそ自分自身でもしっかりとその内容を学び、理解することが何よりも大切だと僕は思います。
まとめ
今回はNFTについて解説しました。
2021年9月時点でNFTの市場規模は約141億ドル、日本円にして1兆5000億円以上と試算されています。世界のアート市場規模は約641億ドル、日本円にして約7兆以上です。
何百年もの時間をかけて成長してきたアート市場に対し、ここ数年でアート市場の5分の1近くにまで成長を遂げています。これがどれだけ凄いことかは言うまでもないでしょう。
そのうえ、その伸びしろは少なくともこれから5倍以上と考えることはできます。
日本ではまだまだ知名度が低いので、その伸びしろは計り知れないものがあります。
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というわけで今回の記事は以上となります。
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ということで、今回は以上です(^^)/