金融・経済

株式会社の始まり

株式会社は、株を持つ人、すなわち株主からお金を調達して、そのお金を使って経営を行います。そして株の価値を高めたり、儲けたお金の一部を株主に渡す仕組みで株式会社は成り立っています。

会社といえばこの「株式会社」という名前を聞くことが多いと思いますが、その成り立ちは知らない人も多いのではないでしょうか。

実は、この株式会社の仕組みが世の中に浸透したのは、歴史の流れから考えるととても自然なことでした。それがどういうことなのか?

今回の記事では株式会社の成り立ちを歴史を紐解きながら解説していきます。

最後までご覧になっていただければ世の中の仕組みや、なぜ株式投資は儲かるのかまで理解できるようになります。

動画でもわかりやすく解説!

Contents

会社のはじまり

株式会社は、14世紀後半にイタリアで作られた共同でお金を出し合う仕組みがベースになっています。

当時イタリアの諸都市では大きなチャンスを秘めたビジネスとして「海運業」が積極的に行われていました。

現代でしたら海運業と聞くと荷物を輸送したりと、ごく一般的な事業に思われるかもしれませんが、この時代に海に乗り出すということはとてもリスクの伴うものでした。

まだ航海術が発達する前の時代なので、安全な航海というにはほど遠く、さまざまなリスクをおかして航海をしても何の成果も得られない…なんていうこともありました。

それにも関わらず、船の手配から、船員の雇用、船のメンテナンスなどの必要なコストは高く、一度の航海でも金銭的な負担は相当大きかったのです。

それでも航海が成功したときのリターンは大きいので、商人たちはなんとか費用の負担だけでも抑えられないかと考えを巡らせます。

そして「出資」という仕組みを作り出します。

出資とは、何かの事業に対して、その成功を期待する人がお金を出しあうというものです。事業が無事に成功した場合は、出資者たちとその事業を成功させた人で利益を山分けするという仕組みです。

この出資という仕組みができあがったことで、多くの人たちから少しずつお金を集めることができるようになります。塵も積もれば山となるということで、結果的に航海に必要な多額の資金を調達することができるようになったのです。

また、この方法は、航海が失敗した時のリスク分散にもなるというメリットも持っていました。出資者としても航海のための費用を全額用意するわけではないので、少ないリスクでスケールの大きな事業に関わることができるようになったのです。

この「出資」というスタイルは瞬く間に広がり、海運業は大いに発展します。

しかし、当時は一つの航海に対して、その都度出資者を募り、無事に船が戻ってきたら利益を分配するという「プロジェクト方式」でした。つまり、期間や目標があらかじめ定められている仕事に対して、お金を出してくれる人を集めるというものです。

ですが、時代の流れとともにこのプロジェクト方式にある問題が発生します。

プロジェクト方式の問題とは?

時は流れて16世紀大航海時代。

ヨーロッパ各国はまだ見ぬ新しい土地を求めて長距離航海を行うようになります。航海術や船の性能もあがっていきます。

新航路が開拓され、アメリカ大陸やアジアの国々との貿易が活発化してくると、一度航海に出るとなかなか戻ってこれないという状況が生まれたのです。

この時にプロジェクト方式の問題点が浮き彫りになりました。

航海が長距離になったことで多額のお金が必要になったのに対して、失敗のリスクが今までよりも大きくなったのです。多額のお金を集める必要があるのに、出資者をたくさん集めることは難しくなっていきました。

仮に一回の航海で失敗した場合、次から出資者はより集まりづらくもなってしまいます。

そこである会社が思いつきます。

それは「ひとつの航海をひとつの事業」とするのではなく、「貿易拠点で行われるやり取りのすべてをひとつの事業」とするものです。

要するにプロジェクト毎に出資してもらうのではなく、航海をおこなう貿易拠点を管理するチームに対して出資してくださいということです。

これは海運業に期待している出資者にとっても良い仕組みでした。

一つの航海に出資するよりも、貿易拠点を中心として複数の船に出資できるほうがリスク分散になるからです。

こうして商人たちは各地に貿易拠点を作りはじめます。

ヨーロッパから遠くのアジアまで出かけるとなると、貿易が成功しても失敗してもとにかく時間とコストがかかります。なので、いちいち自国に戻るのではなく、貿易拠点を中心として、そこで長期間の貿易を行うことで利益を生み出そうと考えたのです。

この仕組みを実現した会社が、世界初の近代的な株式会社と言われている「オランダ東インド会社」です。

オランダ東インド会社の誕生

東インド会社と聞くとイギリスの会社じゃなかったっけ?と思う方もいるかもしれません。

実は東インド会社というのは「アジア・インド貿易の拠点となる会社」を表わしたもので、かつては複数の国に存在していました。

中でもオランダの東インド会社は、画期的な仕組みを生み出したことで一躍有名になっていきます。

まず先ほどもお話したようにオランダ東インド会社はひとつのプロジェクトに対しての出資ではなく、事業を行うチームに対して出資を募るシステムを生み出しました。

これにより、ひとつの航海が会社の命運を左右するということがなくなりました。会社は複数の航海や、長期的な目線で収益を得ることを計算できるようになりました。出資者としても安心感が違いますから、出資するハードルが下がり、多くのお金を集めることにも成功します。

そしてオランダ東インド会社のもう一つ画期的だった点は株主、つまり出資者の「責任の範囲」を決めたことです。

オランダ東インド会社がこの仕組みを生み出す以前は、出資者がどこまで責任を持つのか厳密に決められてはいませんでした。

そのため株主は航海が成功した時には多くの分け前を得られますが、逆に航海が失敗したときは出資額以上の損害を受ける可能性があったのです。

例えば、航海の事業者が船や備品などを他の誰かに借りていたとしたします。

その船を沈没させたり使用不可能な状態にした場合、責任が限定されてないと出資者もこの船や装備の賠償を連帯して負うことになるのです。

ですので出資できる人は、たくさんお金を持っていて、航海が失敗したときのリスクを幅広く負うことができる限られた富裕層のみでした。

また、出資者に経済力があるかを見定めるために彼らの土地や家を見に行くなど審査がとても厳しかったと言われています。ですので航海の準備だけでなく、資金集めにも時間も労力も取られるというデメリットがありました。

しかし、オランダ東インド会社は「責任の範囲」を定めたことで、出資者の負担も明確になり、出資者の審査にも時間がかからなくなったのです。

つまり、航海の成功によるリターンはあるけれど、自分が出資した額以上にマイナスになることはないという画期的な変革を起こしたのです。

このおかげで、株主は富裕層だけでなく、庶民にも広がっていきます。

そうして株主が出資しやすくなったことで会社は莫大な資金を元手に、よりスケールの大きな難しい航海にも挑戦することができるようになったのです。

その後、株式会社は現在とさらに近い形になり世界中に広まっていきます。

しかし、株式会社のあり方を見直す、行き過ぎた株式フィーバーが起こることとなります。

熱狂の南海泡沫事件

オランダ東インド会社の登場以降、株式投資は一般市民の間でも一気に広まりました。

18世紀前半にはオランダのアムステルダムを中心に、パリやロンドンでも空前の株式ブームが起こります。

しかし、流行りだからと十分な知識を持たずに株式投資を行う人たちが増えてくると、その過熱感から株価暴落事件がイギリスで起こります。

この事件は南海会社と呼ばれる会社が、お金集めの便利な仕組みとして株式を利用したことで始まりました。

南海会社は、18世紀初頭イギリスが戦争によって抱えた多額の借金を返済するために設立された会社です。ですから奴隷貿易など特別な貿易をおこなう権利が与えられています。ただ、その代わりにイギリスの借金の返済も引き受けているようなイメージです。

しかし、多額の利益をみこんだ貿易事業はふるわずに、借金を賄うどころか経営すら危うくなってしまいます。

南海会社も「これはマズイ!」と考えて、いまでいう「宝くじ」のようなものをヤケクソで発行したのですが…この事業がなんと大成功をおさめます。

これに味をしめた南海会社は政府の借金をすべて肩代わりしたのちに、南海株という自社株を発行して、投資家が持つ国債と交換しはじめました。

その当時イギリス国債の信用はかなり低下していたので投資家たちは国債を手放したいと思っていました。そんな時に業績が好調な南海株と交換できると知り、我さきにと飛びついたのです。

これにより南海会社は国債引き受け会社として成長し、南海株の株価も急上昇していきます。

株について十分な知識を持たない投資家も「南海株は儲かるらしい」と聞きつけると、次々と南海株へ投資します。

そうして株式投資フィーバーが起こります。

南海株の価格がどんどん上昇していくにつれて多くのお金持ちが生まれました。

その影響は南海会社の株価のみならず、東インド会社株や中央銀行のイングランド銀行株も急騰するという事態まで引き起こします。

この南海会社の成功を夢見て、当時許可制であった株式会社を勝手に設立する人たちもでてきます。

株式投資フィーバー熱狂の渦の中にいた投資家たちは、この実績のない会社の株すらも期待感のみで購入し、これらの価格も急激に上がっていったのです。

しかし、この株式フィーバーにも終わりが訪れます。

無許可で株式を発行する会社の乱立に対し、ついにイギリス政府が規制に動き出します。そうして無断で株式会社を作ることを禁止する法律を制定します。

このお達しを受けて「大変なことになった!」と感じた投資家は、今度は我さきにと南海株やその他の株を手放し始めます。こうなると株価の下落は止まりません。

この株価の大暴落によりイギリス社会はお祭り状態から一転、大パニックに陥ります。ぽっと出の会社は次々と潰れ、つい先日まで高騰していた株券が紙切れ同然となり、町は破産した投資家で溢れたのです。そして自殺者も激増するという最悪の事態に発展します。

まさに投資家の期待が泡のように膨らんでいき、あるところでパっと消えた大騒動であり、この事件は僕たちもよく耳にする「バブル景気」の語源にもなっています。

ちなみにこの南海バブルでは万有引力の法則で有名なニュートンも多大の損害をうけています。この時ニュートンは「天体の動向なら計算できるが、人間の狂気までは計算できなかった…。」と発言したと言われています。

歴史上の有名学者でさえ予測できなかったことからも、どれだけ株式フィーバーが人を盲目にさせていたかがよくわかります。

実はこの時期、イギリスのみならずフランスでも同様の株式フィーバーからの株価暴落事件が起こっています。

これらの事件によって多くの人がお金を失い「株式会社って本当に大丈夫なの?」という雰囲気が蔓延したことでヨーロッパ社会での株式会社の普及は停滞します。

しかし、その後ヨーロッパに広まる産業革命が転機となります。

鉄鋼業、化学工業、機械製造業などが盛んになっていき、これにより工場や大きな設備、製品製造の為にたくさんのお金が必要になります。

そこで南海バブル事件を反省しつつ、大きなお金を集めやすい株式会社を再び許可する流れとなっていくのです。

そして株式会社は少しずつ法整備され、現在の株式会社の形態に近づいていきました。

現代の株式会社が持つ3要素

では、この歴史から得られた現代の株式会社のもつ3つの要素についてお話します。

歴史を知っていると理解できる具合が変わると思います。

1つめは、株主から資金を調達できるという点です。オランダ東インド会社が最初の株式会社となったように、会社は株を発行することで、それと引き換えにお金を集めることができます。

また、株主は責任の範囲が決められているため、仮に経営が失敗したとしても、投資額以上の損失を押し付けられることはありません。

会社の売上が伸びれば、株主はその分け前を受け取ることが出来ます。逆に、会社が損失を出した場合には、利益の分け前を受け取れなかったり、株価が下がるなどのリスクを負担しなければいけないのです。これも航海の仕組みと同じなのです。

2つめは、株主が会社を保有していると考えられている点です。簡単に言えば「会社は株主のものである」という意味です。

航海しようと思ってもお金がなければ何もできないように、お金を出資している株主がいるから事業ができます。

ですから株主が会社の経営陣を選び、その会社の経営方針を確認する権利を持っています。要するに会社をコントロールする力をもっているのです。

ですので、ニュースで耳にするような「株式の買収により実質的な経営権を握った」という事が起きるのです。

また、株主のもつ株は、基本的には自由に第三者に譲り渡すことができるので、株式市場であれほど活発に株のやり取りがなされているのです。

3つめは、株式会社は法律によって「人」と定められ、僕たちと同じように権利を持つことができる点です。つまり「法人」として権利を主張したり、お金を借りたり、契約ができるのです。このことを法人格と呼びます。

会社自体がもともと人が行う事業から発展してきたものだからこそ、こういう名前がついているのではないでしょうか。

歴史を辿ると航海を成功させるためにお金を集めた仕組みが、株式会社を生むきっかけとなりました。その仕組みが今も世界中で受け継がれていると考えると、株式投資はただの怖いものではなく、長い歴史の上になりたっているものだと考えられます。

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ということで、今回は以上です(^^)/

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