新型コロナウイルスの影響で、世界の経済は大きく変わりました。感染者数は膨大になり、次々と企業が潰れて景気は悪化、経済破綻寸前まで追い詰められました。
その後、ワクチンの登場で経済は右肩上がりに回復してきました。
しかし、世界の中心アメリカの金融社会では「今後、大きなインフレが起こる」「リーマンショック級のショックがくる」など不穏な噂が出始めているんです。
そして最近…「テーパリング」という言葉がニュースでよく使われています。
11月には「アメリカの中央銀行がインフレ対策のためにテーパリングを開始」というニュースが流れました。
テーパリングって何だか専門用語っぽいけどそもそも自分たちに関係ある話なの?と思われるかもしれません。
それが実は僕たちの生活を大きく変えてしまうほど関係のある話なのです。そこで今回はこのテーパリングについて解説します。
動画でもわかりやすく解説!
Contents
コロナ禍経済の出口戦略
テーパリングというのは結論から言うとコロナ禍経済の出口戦略のことです。
それではまず、この言葉が出てくる原因となったアメリカのコロナ禍での経済の流れを見ていきましょう。
アメリカの経済は、新型コロナウイルスの蔓延により様々な企業が活動できなくなり、消費も伸び悩んだことで景気がどんどん悪くなっていきました。
しかしその後ワクチンが普及したことによって経済は少しずつ回復に向かい始めたのです。
経済が回復すると
ここで、さらに細かく考えましょう。
経済が回復する、とはどういうことかということでしょうか?
それはお金が使いやすくなることです。
たくさんのお金が使えると、経済は回りやすくなり、景気が良くなるのです。
では、お金を使いやすくするにはどうすればいいかというと、単純に使えるお金を増やせばいいのです。
この、使えるお金を増やすことを「金融緩和」といいます。
金融緩和とは
お金を司る中央銀行という所が、景気を良くするために行う政策のことです。
この金融緩和には大きく分けて2つのやり方があります。
1つ目は、政策金利を引き下げること。
2つ目は、資金の供給量を増やすことです。
一つずつ確認していきましょう。
まず1つ目、政策金利とは何か?
これを下げることがなぜ金融緩和になるのかを説明します。
そもそも金利とは何かというとお金を借りる時のレンタル料、借金で言う利子のようなものです。
その金利が0になれば、借りた分だけ返せばいいというわけですから、お金が借りやすくなりますよね。
そしてお金というのは、まず銀行の銀行である中央銀行から、僕たちが使っているメガバンクなどの一般の銀行に貸し出されます。
今度はその一般の銀行が、企業にお金を貸しだします。
お金がそうして企業にまで渡ると、企業は事業にお金を使うようになります。
例えば設備投資や研究開発費用などに使われ、それによって経済が回り始めます。
政策金利は、このように中央銀行が一般の銀行にお金を貸す際の金利のことを言います。
お金を貸し出す時の金利を下げることで、企業がお金を借りやすくなってどんどん借りてもらい、業績を上げやすくしていきます。
このように政策金利を下げる…つまり、お金を安く貸し出すことでお金を借りやすくして経済を回すというのが、1つ目の金融緩和なのです。
アメリカでは2020年の3月に政策金利が2度引き下げられ、金利はほぼ0になりました。
タダでお金がいくらでも借りられるなら、経済回復なんて余裕に思えますが
コロナ禍による経済の落ち込みは、この金利の引き下げだけでは支えきれないほど深刻だったのです。
では、金利を下げるだけでは景気が良くならない場合どうすれればいいのでしょうか?
ここで、2つ目の金融緩和である、資金の供給量を増やす「量的金融緩和」という方法が出てくるのです。
量的金融緩和とは?
これは、国債や不動産担保証券を中央銀行が一般の銀行から買い入れることで、市場に大量の資金を供給する政策です。
簡単に言うと「中央銀行が現金の代わりになるものを一般の銀行から大量に買うことで、一般の銀行に大量の現金を渡す方法」という感じです。
先ほどの「金利の引き下げ」は、お金を安く貸すことで景気を良くする”間接的”な方法でした。
量的緩和は”直接的”です。お金の代わりになるものを中央銀行が一般の銀行から買って、直接お金を銀行に注ぎ込むのです。
すると銀行はいっきに現金がたくさんある状態になりますから、太っ腹になります。企業にお金を貸し出しやすくなりますし、もっと言えば貸し出したいくらいにお金がたくさんある状態なのです。
このように直接現金を市場に流し込む方法が量的金融緩和政策です。
以上のこの2つの金融緩和「政策金利の引き下げ」と「量的金融緩和」が、コロナ禍では日本やアメリカ、ヨーロッパといった主要国のほとんどで行われました。
特にアメリカでは繰り返し行われて2021年10月の中央銀行の総資産は金融緩和が始まる前のほぼ2倍となる8.4兆ドル、日本円にして約930兆円まで上昇しました。
これはつまり金融緩和によって約4兆ドル
日本円にして約460兆円が市場に流れたということになります。
つまり、とんでもない額のお金を企業が使えるようになったわけです。
しかし、ここで問題が出てきます。
このようにお金が出回りすぎると、景気がよくなりすぎて経済的なリスクを高めてしまう恐れがあるんです。
そのリスクとは何かと言うと…出回るお金が多すぎてお金の価値が下がり、物の値段が上がる「インフレ」という現象です。
例えば、あなたが1億円を手に入れたとします。
一瞬お金持ちになったと喜びますが、まわりを見渡すとみんな100億円を手にしていました。すると、自分の持っている1億円の価値が途端に大したことないものだと気付かされます。
つまり、それがお金であっても数が増えすぎると、その価値が下がってしまうんです。
そのため、中央銀行は増えすぎたお金の量をコントロールして、お金の価値が下がるのを止めなければなりません。
その為に行うのが今回の動画のテーマである「テーパリング」なのです。
テーパリング(Tapering)は直訳すると「先細り」や「次第に先が細くなっていくこと」という意味があります。
最初にお伝えしたようにテーパリングとはコロナ禍経済の出口戦略のことで、これを金融引き締めとも言います。
金融引き締めは、金融緩和とは逆で「金利を上げる」「 流れるお金の量を減らす」ということ行います。
そしてそれを一気に行うのではなく、徐々に行っていくのがテーパリングの特徴なのです。
終わりのはじまり
このように、金融緩和をある程度やり切ってから、徐々に金融引き締め、つまりテーパリングが始まるので、テーパリングは金融緩和の「終わりのはじまり」と呼ばれることがあります。
さて、ここで一旦まとめます。
まず、景気が悪くなると経済を回すために金利を下げ、資金の供給量を上げる2つの金融緩和が行われます。
しかし、その金融緩和が続くとお金が増えすぎてインフレになってしまうので、景気を落ち着かせるるために徐々に金融引き締めを行います。このことをテーパリングと呼びます。
つまり悪くなった景気を回復させるためにお金を回しますが、今度は回しすぎたお金をテーパリングすることで経済を安定させるという流れになります。
ここで「テーパリングの意味はわかったけど、国とか中央銀行とか、偉いひとがやることだし、やっぱり自分には関係ないや。」と思う方もいるでしょう。
でも、これが関係あるんです。
記事を見てくださっている方の中には、コロナ禍に株や投資に興味を持った方も多いのではないでしょうか。
テーパリングの時期をきにしているのは株式市場の参加者ですが、株をもっている株主だけではなく、上場している企業やその関連会社から取引先…と考えると僕たちにも大きく影響してきます。
なお、コロナ禍のアメリカでは国民への給付金が計3回支給されました。
その給付金の20~30%は株式投資に回ったと言われています。
アメリカは日本のように健康保険が手厚くないので、自分で資産形成をすることが当たり前で、日本人の貯金の感覚で株に投資をします。
ですから給付金をはじめ市場に出回るお金が多いと必然と株価は上がっていきます。
そういった流れでコロナショックで下がった株価は急激に上がり、むしろ株高の状態になりました。
しかし、テーパリングが行われるようになると市場のお金が減りますから株価は下がります。
そのため、多くの企業や投資家など市場参加者はいつテーパリングが行われるのかを警戒してきたのです。
ここで、テーパリングでなぜ株価が下がるのかをもう少しだけ深彫りします。
テーパリングは先ほど説明したように金融緩和の縮小を意味します。
中央銀行は一般の銀行から債権などの買い入れの量を減らしていきますし、金利も引き上げていきます。
すると銀行内のお金は減っていき、今までのような企業への積極的な融資ができなくなります。
これは企業からすると、銀行からなかなかお金を借りれないので、事業を拡大させていくことが難しくなります。それはつまり今後、利益が拡大していきにくくなるということです。
そうなると「今の株価は高い」と判断されるようになるのです。
企業の業績が悪くなり株価が下がる前に株をお金に交換しておきたいので株が売りに出され、株価が下がっていくということになるのです。
そして、投資家はどこに投資をするべきか?どこの株が強いのか?
より厳しくチェックするようになります。お金が少ないから用心深くなるのです。
これが量的緩和が行われていた頃とは変わり企業の業績に注目する「業績相場」になったということです。
また、テーパリングにより金利が上がり始めます。
下げた金利を元に戻す段階に入るわけです。金利が上がるとどうななるのか?
ここに、僕たちの生活に影響を与える大きなポイントがあるんです。
お金には「金利が高い通貨にお金が集まる」という傾向があります。
金利を上げても経済が成り立つ状態だから、経済的に信頼できる通貨だと一般的に判断されるのです。
なのでアメリカでテーパリングが始まると、米ドルは金利が上がり、世界中から求められるようになります。
そうすると自国の通貨、日本なら日本円を売ってドルを買うという流れが強まるため、円の価値が下がっていきます。この状況を「ドル高円安」と言います。
つまり、日本円がドルより価値が低くなることを言っているんです。
現在、世界の経済で日本円は円安に動いています。
円安自体は悪い事ではありませんが、生活必需品の多くを輸入に頼っている日本は、過度な円安が続くと何を買うにも値段が高くなり苦しくなってしまいます。
テーパリングの進め方によっては今まで1,000円で買えていた商品が中身は変わらないまま1,500円になり…2,000円を出さないと買えなくなる…ということもありえるのです。
だからコロナ禍の出口戦略として
世界がどうやってテーパリングしていくのかを知ることは他人事ではなく、僕たちの生活に直結する重要な学びなのです。
また、すあし公式LINEではよりパーソナルな学びお金やスキルアップなどの情報を配信しています。
ということで、今回は以上です(^^)/