金融・経済

ガソリン価格はなぜ高騰しているのか?(原油との関係)

ガソリン価格は、僕たちの生活と関わりが深く、昨年はガソリン価格が急に高くなったことで家計が苦しくなった方も多いでしょう。

なんとなく不満を募らせているものの、なぜ価格が高くなったのかは以外に知らなかったりします。でもこういう身近なことへの疑問が経済を学ぶことの入り口になっていたりするのです。

そこで今回は経済の基礎であるガソリンの価格がどう決まるのか、そこに関連する原油についてまでわかりやすく解説します。

最後までご覧頂ければガソリン価格と世界の動きが理解できるようになりニュースを見る目が変わること間違いありません。

動画でもわかりやすく解説!

Contents

ガソリン価格を決定するもの

まずは、ガソリン価格が実際にどれくらい高くなったのかを見ていきましょう。

今からおよそ1年前、2020年の11月頃レギュラーガソリン1リットルあたりの価格は全国平均で134円ほどです。

そこから値上がりを続け1年経った昨年末頃には165円を超えてしまいました。

その差は実に30円です。

30円といわれてもピンと来ないかたもいるでしょう。

ガソリンスタンドでレギュラーを満タンに入れる時のことを考えましょう。

普通車なら大体50リットル、大型車なら100リットルくらい入れるのが目安です。

同じ一回の給油でも1,500円~3,000円ほど余分にお金が掛かってくるという計算です。これがかさむと痛い出費となります。

なぜガソリンの価格が上がったの?

では、どうして急にガソリン価格は上がってしまったのでしょうか。

通常モノの値段というのは需要と供給のバランスで価格が決まります。

需要」とは、どれくらいの量が求められているかのことで「供給」はどれくらいの量を売ることができるかを意味しています。

需要の方が多ければ価格は上がり、逆に供給の方が多ければ価格は下がります。

しかし、日本でガソリンの需要が急に増えたのか?と言えばそうではなく需給バランスとは関係なく起きた価格の高騰でした。

これは海外との関わりが大きなポイントになるので、順を追ってみていきましょう。

そもそもガソリン価格は

  • 原材料である原油価格
  • それを買って日本に持ってくる輸入コスト
  • 国内で色々なところで販売するまでに掛かる販売コスト

これら3つの要素から決まります。

このうち国内で掛かるコストはそれほど変わっていないため

原油価格と輸入コストに大きな理由があります。

原油価格が高くなれば日本でのガソリン価格も値上がりするのは想像しやすいですよね。

では、輸入コストとは何でしょうか?
一言でいうなら、海の向こうから原油を運ぶ時に掛かるお金のことです。

かかる経費にはいくつかありますが、中でも重要なのは通貨の問題でしょう。

日本は原油を外国から買っており、外国で買い物をするためには相手の国が使っている通貨が必要になります。

現在、原油の取引はほとんどの場合ドルが使われているので日本円を一旦ドルに両替してから原油を買っています。

通貨の交換比率は毎日変動し、その変化によって安く買えたり高くついたりするわけです。

あなたは円安、円高という言葉をニュースで聞いたことがありませんか?

これは、円とドルを交換する比率のことを指しています。

同じ金額の日本円でたくさんのドルを手に入れられるときは円高、ちょっとしか手に入れられない時は円安と呼びます。

たくさんのドルと交換できるということは円の価値が高いから円高少しのドルとしか交換できないということは価値が低いから円安と考えればわかりやすいでしょう。

円安になると交換できるドルが減るので、買える原油の量も減ってしまいます。

つまり、円安のときに以前と同じ量の原油を買おうとすると、余分にお金が掛かってしまうことになるのです。

これがガソリン価格に上乗せされることで、ガソリンは値上がりします。

このように、ガソリン価格は外国が決めている原油価格と日々変動する円とドルの交換比率によって大きな影響を受けています。

だからガソリン価格について理解するためには海外の事情についても知る必要があるのです。

原油価格で動く世界

それでは、原油価格はどのようにして決まるのでしょうか。

基本的には世界の石油需要と供給のバランスで決まりますが、それ以外の事情も深く関係してきます。

それは何かというと、石油で儲けたい投資家たちの動きです。

今回のガソリン価格高騰の裏にあった海外の事情を、需要と供給のバランスと投資家の観点から見ていきましょう。

コロナ禍の影響によって、世界の経済活動は停滞しました。

まず人の移動や物流などが減り、燃料である石油が求められなくなったことで原油価格は大幅に下落します。

これを調整するために、原油の生産国は足並みをそろえて”生産量を減らす”ことにします。そしてこの体制を2022年末まで続けると決めました。

一方で、「新型コロナの感染が落ち着いたら原油がたくさん必要になるだろう」との予想があり、投資家たちは未来の分の原油を先に買おうとしました。

つまり供給量が減っているタイミングで急激に購入者が増加したというわけです。

先を見越した投資家や石油企業が一斉に原油を買ったことで世界の原油価格を決める指標の一つであるアメリカ産の原油に7年ぶりの高値がつきました。

中東産の原油価格は、アメリカで決まった価格を参考にして少しそこから安くなるように販売されています。

そのためアメリカ産に高値が付くと、日本が中東から買う原油も影響を受けて高くなってしまうのです。

つまり日本が買っている原油の価格は「生産国がどれくらいの量を供給するか」と
アメリカ産の原油にどれくらいの値段がつくか」で大きく変わるのです。

アメリカの原油取引

アメリカの原油取引所は世界の原油市場に大きな影響を与えています。

そもそもなぜ、原油の取引がドルで行われているのでしょうか?

理由はいくつかありますが、かつてアメリカの石油関連会社が原油取引を支配していたこと、アメリカが世界最大の石油消費国であることなどがあげられます。

取引がドルであり、なおかつアメリカが一番石油を消費するなら「アメリカで取引するのが便利だ」と考えられるようになりました。

こうして原油の取引所がアメリカで開設されると、世界中の人たちが集まり活発にやりとりするようになったのです。

どれくらい活発かというと
一日でアメリカ産の原油が実際の100倍もの量で取引されるほどです。

未来を先取りして売買を繰り返すため、現在ある量と取引量が大きくかけ離れてしまうこともあるわけです。

そしてこの取引が世界の原油価格に大きな影響を与えています。

今回のガソリン価格高騰では

  • 「冬の燃料代」
  • 「コロナ感染がいずれ落ち着くだろうという予想」
  • 「アメリカ南部を襲ったハリケーン」

などから投資家たちが動きました。

アメリカ南部の沿岸には石油関連施設が集中しているのでハリケーンの影響を受けると石油の供給量が減ってしまいます。

そこで投資家たちは、将来の値上がりを予測して一斉に買ったのです。

また、いますぐに原油を必要としている企業も、値上がりする前に買わないと損をしてしまうので一斉に買ったと考えられます。

このような動きが、アメリカ産原油の価格を大幅に押し上げる要因となりました。
この影響が中東、そして日本へと波及していったのです。

実物が欲しいのではなく、売り買いによって得られる利益を目的とした取引は、原油だけではなく通貨でも行われます。

例えば今は円安ですが、これは円からドルにたくさん両替されているのが原因だと言われています。

どうして両替されているの?

両替される理由はいくつかありますが、コロナによる経済危機からアメリカがいち早く立ち直るだろうと期待されていることは大きいでしょう。

つまり不安定な日本の市場で投資するよりも、円をドルに両替してアメリカ向けに投資した方が安心だと考える人が増えてきているのです。

さらに原油価格が高くなると支払う金額も大きくなりますから、取引に使うドルがたくさん必要になり、これも円をドルに両替する理由になります。

原油高と円安が進んだことで、ガソリン価格は高騰しました。

遠く離れた場所の出来事が日本に影響を与えるというのは、世界経済が日本と密接に繋がっているという意味でもあるのです。 

僕たちの生活への影響

次は、これが僕たちの生活にどのような影響を及ぼすのかを考えてみましょう。

車によく乗る人は、ガソリンが高くなるとお財布の負担が大きくなってしまいますよね。

しかし、車に乗らない人にとっても原油高やガソリン高が暮らしに与える影響は想像以上に大きなものです。

ガソリンは燃料として使われることが多く、まず物流が影響を受けます。

輸送費が高くなれば輸送会社の経営が苦しくなり、値段を上げざるをえません。
そうなると僕たちが普段買い物をする時の値段にも影響しますから、その分だけ商品も高くなってしまいます。

さらに工業・農業・漁業などにおいても
機械やボイラー、漁船を動かすための燃料費が高くなっているわけですから製品や食料品の値段にも影響を及ぼすのです。

すでに値上がりを起こした業界の一つが、原材料に石油を使うプラスチック業界です。

大手化学メーカーが作っているプラスチック素材が、次々に値上がりを始めました。

プラスチックは僕たちの生活にとって身近で欠かせないものであり、プラスチックを使った商品の値段に影響が出れば、これも家計の負担となります。

そして無視できないのが電気・ガス料金です。

日本は火力発電が主流で、輸入に頼っている天然ガスや石油などを燃やすことで発電しています。家庭用のガスもほとんど輸入です。

天然ガスの価格は日本に輸入される原油価格に基づいて計算されたものが多いので、これも連動して影響を受けます。

なので原油高によって天然ガスの輸入コストも上昇し、利用料金に上乗せされて家計に負担をかけてしまうのです。

料金に反映されるまでには3~6ヶ月程度のタイムラグがあるとされているので、まさにこの記事をみたあと、これから料金が高くなる可能性があります。

これ以外にも石油に支えられている業界は数多くありますから、それらが軒並み経営に影響を受け、僕たちの家計の負担に繋がる可能性は十分に存在します。

原油は僕たちの生活の隅々にまで浸透していて、原油高はその業界だけではなく、経済そのものから、個人の財布にまで幅広い影響を及ぼすのです。

普段の買い物の値段を意識してみる、プラスチックを使った製品が身の回りにないかチェックしてみる、そういうことが経済を学ぶ入り口になります。

そういったところから一歩学んでみたら良いのではないでしょうか?

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ということで、今回は以上です(^^)/

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