金融・経済

悪夢の物価上昇 スタグフレーションとは?

スタグフレーションという言葉をご存知でしょうか?

経済ニュースで聞いたことがあるかもしれませんが、いまいちピンとこない方も多いでしょう。

実はいま、日本をはじめとして世界中でこのスタグフレーションが起こるかもしれないという懸念が高まっているのですが、そもそもどういうもので、何が問題なのでしょうか?

そこで今回の動画では、僕たちの生活にも大きく影響を及ぼすスタグフレーションについてわかりやすく解説します。

最後までご覧になっていただければいま世界がどういう状況にあるのかが理解できるようになりあなたの金融経済リテラシーが高まること間違いありません。

このチャンネルではそういった情報を配信しております。少しでも必要な情報だと感じたらどこのチャンネルかわからなくなる前にぜひチャンネル登録をよろしくお願い致します。それでは早速やっていきましょう。

動画でもわかりやすく解説!

Contents

スタグフレーションの仕組み

スタグフレーションとは経済の「停滞」を意味する「スタグネイション」と物価が高くなる「インフレーション」を組み合わせた言葉です。

これがどういうことなのかを見ていきましょう。

インフレは物価が高くなる現象ですがそういったモノの値段に大きく影響するのが「需要と供給」のバランスです。

需要と供給とは

需要とは「商品やサービスがどれくらい求められているか」、供給とは「どれくらい用意できるか」というイメージです。

この2つのバランスの間で需要が多い、つまり欲しい人が多い時は物価が上がり逆に供給の方が多い時は物価が下がるのが一般的です。

例えばオークションでは、出品された一点モノを大勢の人が欲しがると、どんどん値段が高くなっていきますよね。

これと似たように、供給に対して需要が多くなると物価は高くなるのです。

企業の出している商品やサービスも同じように、供給に対して需要が多くなると売上が伸び、利益を出しやすくなるので企業の業績も良くなります。

商品がたくさん売れてお金をたくさん稼げる。

商品をもっと作ればもっと儲かるので、人を沢山雇いますし、設備投資にもお金をかけていきます。

そうすると企業だけでなくそこで働いている従業員も潤い、普段の買い物も盛んになっていく、そしてまた商品が売れていく…というのがインフレが起こる仕組みです。

また、お金自体が世の中にどれくらい出回っているかもインフレに影響します。

例えば、国民みんなに10億円が配られたら、今までは高く感じていた1,000万円の高級車も安く感じることでしょう。

車以外でも、特に生活に必要なものであれば値段が高くなっても買いますよね。

このように物価が高くなったとしても、世の中にお金がたくさん出回っていて、経済がまわっている状態であればインフレは悪いものではないのです。

ところが、一見同じように見える物価上昇にも悪いパターンというものが存在します。それは「需要が増えていないのに物価が高くなる」という場合です。

例えば、車をつくるときには部品などの材料費や輸送するときのエネルギー費などいろいろなコストが掛かっているのですがこのコストが何らかの理由で高騰することがあります。

すると高騰したコストが商品の値段に上乗せされ、需要が高まっていないにもかかわらず、商品の値段が上がってしまうのです。

欲しい人が少ない状態で値上げすると、更に商品は売れなくなります。

企業は利益が上がらず、従業員に給料も払えなくなっていくので、従業員は家計が苦しくなり、さらに買い物を控えるということになります。

こういった悪循環が起きてしまうのが「スタグフレーション」なのです。

スタグフレーションの原因

なんとなくスタグフレーションの概要が掴めたところで、この現象が世界にどのような影響を与えてきたのかをみてみましょう。

言葉として最初に使われたのは1965年のイギリスだと言われています。

この頃イギリスでは、インフレの進行と同時に、失業者の増加が問題となっていて、これが「イギリス病」と呼ばれていました。

それまでは産業革命の好景気と共に物価が上がってきたので不景気とインフレが同時に起こるという謎の現象に対処できずにいたのです。

また、同じ現象がイギリス以外の国でも起きるようになり、うまく対処できないまま1970年代以降、世界的な問題になっていきます。

イギリスや日本では物価が一時期20%以上も高くなり、またイギリスやアメリカでは10%近い失業者が出ることとなりました。

このような事態に陥ってしまったのは?

ではなぜ、このような事態に陥ってしまったのでしょうか?

その理由は、経済悪化に繋がる様々なできごとが重なったからですが、その中でも2度の「オイルショック」が大きな原因となっています。

その当時、工場を動かすにも、モノを運ぶにも石油が必要なので世界の経済は「中東の石油事情」に大きく依存していました。

そんな中、中東で起きた戦争や革命の影響で、石油がうまく採掘できず供給が低下したことで、石油の値段がいっきに値上がりしたのです。この影響で世界経済が大混乱となりました。

さらにその背景には、通貨の問題もありました。

スタグフレーションが起きるまでの間、先進国は好景気が続いていて、経済はどんどん発展していました。

この好景気を後押しするように、各国の政府は積極的に通貨を発行して、出回るお金の量をふやしていました。

お金の量が増えれば、企業も個人もこれまで以上にお金を使うものだと考えられてきたからです。社会に出回る通貨の量を増やすことで、経済をより活性化させようとしていたのです。

ところが、気が付くと出回るお金の量が増え過ぎてしまいインフレが極端に進むようになっていたのです。

そこに先ほどのオイルショックが起きたことで、世界中でインフレと不況が同時に発生したのです。

また、不況の時もスタグフレーションは発生しやすくなります。

買い物をしたい人が少ないとき、つまり需要が少ないと値段を下げないと売れなくなるので利益が少なくなり、企業の経営は苦しくなります。

すると企業は無駄な出費を抑えるためにコストをギリギリまで削ります。

そういったタイミングで原材料やエネルギー価格が上昇してしまうと、今度は商品の価格を上げるか、人件費を削らなければいけません。

そうして物価の上昇と失業者の増加が進みインフレと不況が重なる事態に陥るのです。

このようにスタグフレーションは、出回るお金の量が多すぎる時に戦争や災害など何かしらの経済ショックが重なると起こりやすくなるのです。

日本にも迫りくる危機

日本でのスタグフレーションは1970年代にオイルショックで起きたものという見方が一般的です。

この時は、いったい何が起きていたのでしょうか?

日本が高度経済成長を迎えていた1960年代には、物価は緩やかに上昇し続け、失業率も1%台で落ち着いていました。

つまり、景気の良いインフレが進んでいたということです。

70年代に入ると、政府は積極財政によってさらに大量のお金を発行しました。

これは国民全体にもっとお金を行き渡らせて、社会全体をより豊かにしようと考えていたからです。

ですが、お金の量が増えるとインフレの進み方も急激になっていきます。

そんな時に起きたのがオイルショックです。

この供給不足によって「狂乱物価」と呼ばれるほど、世界でも極めて高い物価上昇が起こりました。

この急激な上昇は「消費者物価指数」で確認することができます。

消費者物価指数とは

消費者物価指数」とは、日本全体における物価を数値にして表したもので、年度別で比べることで物価の変動を確認していくことができます。

この指数で確認すると、1974年の数字は前年よりなんと23%も上昇していました。

それまでは大体5%づつくらいの上昇率だったことを考えると、いかに急激な上昇であるかが分かります。

この頃にトイレットペーパーの買い占め騒動も発生し、まさに狂乱的な状況だったのです。

一方、失業率は2%程度で留まっていて、世界と比べるとかなり落ち着いている方でした。

その理由として、この頃の日本には「リストラ」という概念がなく、定年まで働くのが一般的だったからでしょう。

日本全体で給料が上がり続けていたので人件費が高い上にコスト高まで重なり、企業の負担は大きいものとなりました。

つまり、石油に加えて人件費が高かったのも物価高に影響していたということです。

こうした一連の状況に対応するため、政府は「緊縮財政」に転換します。

予定していた公共工事をいくつも延期して、国の出費を減らしていくことにしたのです。国の出費が減ると、社会全体の経済活動が抑えられ社会にお金が回りにくくなります。

すると、企業や個人の使うことのできるお金の量は減り、新たな投資や買い物を控えるようになります。

日本全体の需要が下がるので、物価を落ち着かせるのに効果があると考えられたのです。

また、金融政策でも、この激しい物価高騰を抑え込もうとしました。

この時に行われたのは「金融引き締め」といって、出回っているお金の量を減らすというものです。

通常のインフレなら、これが正しい対応のはずでした。

ところが、これらの政策は裏目に出て、かえって景気を悪化させてしまいます。

なぜなら、スタグフレーションはインフレと不況の組み合わせなので、インフレに対応すれば景気が悪化し、不況に対応すればインフレが加速してしまうのです。

その後、数年かけてインフレ自体はおさまりますが、日本経済にとっては大打撃となりました。

戦後初めてのマイナス成長…

つまり、経済が後退したことが数字でもハッキリ出てしまったのです。

このように、日本でもスタグフレーションは発生するものなのです。

現在の日本は?

では、現在の日本はどうでしょうか?

これまで新型コロナの影響で需要と供給が両方下っていましたが、自粛が解かれたことで需要が高まってきつつあります。

供給は一度下がると回復に時間がかかるので、需要が先に増えていくことが多いです。

また、昨年から原油高が続いているので、これがコストを圧迫し、物価が高くなる原因となります。

つまり、スタグフレーションのリスクはあるのです。

実際に食料品は次々と値上げが発表され、電気・ガス料金も高くなっています。

これらは需要の増加ではなく世界情勢による原油高の影響を受けたものなので、「悪いインフレ」だと言えます。

では、こうした中で取れる対策はあるのでしょうか?

過去の事例に何かヒントがあるかもしれません。

乗り越えた先にあるもの

過去にスタグフレーションが特に進んだイギリス・アメリカ・日本の例を見てみましょう。

まずイギリスでは、1980年頃に登場したマーガレット・サッチャーという首相が対応に乗り出しました。

彼女の政策を簡単に言えば「政府に頼らず自分でなんとかしろ」というものです。

公共サービスの民営化を進め経済は規制を減らして自由化しますが、金融政策は引き締めを行いました。

これは所得税の減税と消費税の増税を組み合わせるというもので「規制を無くしたんだから、節約しながら働け」とばかりに国民のケツを叩くものです。

ところが、インフレは落ち着いていく一方で産業がボロボロになり、失業者はなんと倍の数にまで跳ね上がりました。政策が厳しすぎたせいで、むしろ脱落者を増やしてしまったわけです。

その後、産業を助けようと金融政策を緩和に転換し、お金が回るようにしました。

しかし産業はすでにボロボロなので、お金が出回ってもなかなか経済が回らず、多くの失業者が残ってしまいます。

失業者が減ったのは10年も先のことで、この時に広がった貧富の差は未だに残っています。

次にアメリカでは、レーガンという大統領が思い切った政策を行いました。

主に軍事方面で政府の出費を増やした上、税金を大幅に減らし、規制を無くして経済を自由化しました。

金融政策はイギリスと同様に引き締めです。

レーガンの政策の特徴は、供給力…つまり企業の支援に重点を置いていたところです。

簡単に言うなら「企業が活動しやすい環境にしておけば、後は勝手に上手くいくだろう」ということですね。

この政策は他の政治家から「おまじない経済だ」と批判されましたが、後に「レーガノミクス」として評価されます。

実際には、強力な引き締めによって失業率が一時10%に迫り、肝心の企業の活動も停滞していました。

その後緩和に切り替えたことで失業者を半分に減らすことができ、需要も回復して企業が活動を始めます。

また、引き締めている間にインフレは落ち着き、タイミング良く原油安に助けられたこともあって、結果的に景気は回復しました。

その一方で、財政赤字の拡大や外国との貿易でトラブルを引き起こすなど、別の問題にも繋がりました。

イギリスと同じように、何かを解決すれば別のところに問題が残るという結果になったわけです。

日本では?

では、日本はどうだったのでしょうか?

金融の引き締めが裏目に出た、というお話をしましたが、そこに問題があることはすぐに判明していました。

そこで「引き締めをやめるべきだ」という意見が国内で高まるのですが、なかなか緩和に踏み切りません。

なぜかというと、緩和のタイミングが早過ぎるとまた物価が上がり元に戻ってしまうかもしれないと警戒していたからです。

政府はインフレの落ち着きを確認してから徐々に金融緩和を行いました。

するとお金の量が増えて経済は回りだし、輸出の増加に引っ張られる形で景気は回復に向かいます。

しかし、貿易相手である外国とのトラブルに繋がってしまいます。

輸出の儲けを増やした分、輸出先の国で赤字が増え、国同士の揉め事になったということです。

この問題を貿易摩擦といい、特にアメリカとは繰り返し揉めることになりました。

このように、経済は外国と深く関係し合っているので、大胆な金融政策を行うと思いも寄らない外国とのトラブルが起きることがあるのです。

3つの国を見てきましたが、スタグフレーションは一度突入すると、脱出にかなりの時間と手間がかかることが分かります。

企業の経営や国民の暮らしも苦しくなり、外国とのトラブルが起きやすい問題もありました。

さて、世界中でいまスタグフレーションの懸念が高まっているのは何故でしょうか?

それは新型コロナの影響で需要と供給の両方がさがっていたところに、ロシアによる、ウクライナ侵攻が起きたからです。

ロシアは石油や天然ガスを世界中に輸出するエネルギー大国であり一方のウクライナは小麦など穀物の輸出大国です。

世界中がコロナ禍から経済活動をようやく再開しはじめた矢先に、スタグフレーションが発生する条件である「戦争」が起きてしまったのです。

特にエネルギーや穀物などを輸出する国が混乱すると、その供給量が下がり、経済ショックに繋がってしまうのです。

さらに、ロシアへのSWIFT排除という経済制裁も加わり、いま世界中の経済が混乱しているのです。

もちろん日本も他人事ではなく、原油高の影響をうけてガソリン代だけでなく食料品から日用品まで値段があがっています。

これは悪夢のスタグフレーションの始まりとも充分に考えることができます。

激動の世の中で、どう立ち回るのか?自分には何ができるのか?

そういったことを考える知識を蓄えていくことが学ぶことだと僕は思います。

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ということで、今回は以上です(^^)/

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