世界にはおおよそ200の国がありますが、そのほとんどの国には合衆国や連邦、王国、共和国などの称号がついています。
こうした国の称号のことを「国号」と呼ぶのですが、実はこの国号を見るだけでその国の政治体制を理解することができます。
例えばアメリカはアメリカ合衆国、ロシアはロシア連邦、タイはタイ王国、中国は中華人民共和国といった国号がついていますが、このようにいくつもある国号の意味とは一体何なのでしょうか?
そこで今回は意外と知らない「国号」の意味をわかりやすく解説します。
最後までご覧になっていただければ国の名前を聞くたびに、どのような国か把握できるようになり、あなたの教養が深まること間違いありません。
動画でもわかりやすく解説!
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王の国・公の国
一般的に国は、支配する権利が誰にあるのかということで、大きく二つに分けることができます。
一つは王や貴族が国を治める「君主制」です。
もう一つは国民が選んだ代表によって国を治める「共和制」です。
まずは王や貴族が国を治める君主制から見ていきましょう。
君主制はその中でも、王さまがトップとなっている王国や、それ以外にも公国があります。こう説明すると「王と公の違いは何なの?」と思われるかもしれません。
王と公の違いは?
実は世界には「王」「公」「皇帝」など貴族に関する称号がいくつかあり、地域ごとにその基準に違いがあるのです。
ある土地を統治している人のことを「君主」と言います。
そこで、一つの民族自体をひろく治めている君主のことを「王」と呼びます。その王が治める国よりも規模が小さいイメージで、ある程度の地域を治める君主のことを「公」と呼びます。
現在、王国の国号を持つ国としては、タイ王国、スペイン王国、ノルウェー王国など20カ国存在しています。
一方、公国と呼ばれている国は世界では3か国のみでモナコ公国、リヒテンシュタイン公国、アンドラ公国だけです。
さらに、「公」よりももう少し大規模な地域を収めている貴族である「大公」がつくのはルクセンブルク大公国の1か国のみです。
ちなみに「皇帝」ですが、これはかつてヨーロッパ広域を支配していたローマ帝国の君主と、その後継者に使われる称号です。また、他の国を支配している帝国の君主を指すときにも使われます。
現在、ローマ帝国の後継国はありませんし、他の国を力で支配する帝国もありませんのでヨーロッパには「皇帝」がいないという状態なのです。
この他に、イスラム世界の君主の称号に「アミール」という位があります。アラビア語で「司令官、総督」という意味があり、それが転じて称号になりました。このアミールが支配する国を首長国と呼びます。こちらはアラブ首長国連邦、クウェート、カタールの3つの国があります。
合衆国と連邦
世界は「王国」や「公国」のように全ての権限が一つに集中している国ばかりではありません。
2つ以上の国や州が集まって一つの政府として国を治めている場合は「合衆国」や「連邦」と呼ばれます。
現在、合衆国が使われている国はアメリカ合衆国とメキシコ合衆国の2カ国のみです。アメリカは、もともとはイギリスに支配されていた地域で13の州がありましたが、独立を果たすために統合したという歴史があります。
他の国に対抗できる力を持つために、いくつかの地域が同盟を結ぶことで合衆国という一つの国に生まれ変わったというわけです。
連邦と呼ばれる国には、ロシア連邦やドイツ連邦などがあります。これは国家の中に独立国家並みの力を持った国や領土が集まってできた国のことです。
ただ、合衆国や連邦は、その呼び方こそ異なりますが国の運営方法としてはほとんど一緒です。
「合衆国」も「連邦」もそれぞれの地域が個別に強い権力をもっているので、政府は各地域からの権限や財源を任せられているという形で成り立っています。
各地域の権力が強いため、独自の法律をつくることもできるほどです。
だからアメリカの政府の機関であるFBIのことを「連邦捜査局」と言うし、議会のことを州議会と区別してわざわざ「連邦議会」と表記するのです。
さらにアメリカでは連邦軍と呼ばれる州単位の軍隊も所持していて、地域の警備隊的な役割を持ちながら国の軍事にも参加しているという特徴もあります。
日本も合衆国と同じようなもの?
「アメリカは51の州に分かれていて、日本も都道府県が47に分かれているから、日本も合衆国と同じようなものでは?」と考える人もいるかもしれません。
しかし、アメリカと日本では地域の政治体制も全く違います。
それぞれが国のような役割を持つ州が集まってできたアメリカに対して、日本の都道府県は、あくまでも国が土台となっていて、それを細かく分けたものです。
ですから、地方のことは地方に…という考えはあるものの、あくまで国が主体であることは変わりなく、法律を各都道府県に移譲するということはありません。アメリカの州ような権限はないことがほとんどです。だから日本は合衆国や連邦は当てはまらないのです。
ちなみに英語ではUnited StatesもFederalもどちらも「連邦・連合」とも直訳できます。これをわざわざ国によって使い分けているのは、かつて海外から入って来た英語を日本語に翻訳するときに決めた国号を、今でも変わらず使っているからだと言われています。
イギリスは連合王国
次にイギリスを見てみましょう。
今まで見てきた王国や連邦制をあわせもっている国がイギリスです。
僕たち日本人が普段イギリスと呼んでいる国の正式名称は「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」と言います。
海外で、イギリスのことを「UK」と表すのですが、これは連合王国を意味するUnited Kingdomの略称であり、これが英語圏での一般的な呼び方となっています。
「イギリス」は4つの国から成り立つ
イギリスは、イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの4つの国から成り立っています。この4つの国を統治する君主がイギリスの王さまということになるのです。
つまりイギリスは王さまが君主である「王国」であり、4つの国が同盟を結んだ「連邦制」でもあるのです。
その歴史を振り返ると1700年代はじめ頃はイングランドとスコットランド2国のみが統合された国で「グレートブリテン王国」と呼ばれていました。
1800年代に入り、アイルランド王国と統合し、さらに1900年代に北アイルランドと統合して今のかたち「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」となったのです。
その歴史上でかつてイギリスの支配下にあったカナダやオーストラリア、ニュージーランドの3か国をはじめとする16の国々もイギリスの王さまがトップとなっています。
そのため、共和国と名乗ってもおかしくないカナダやオーストラリアも連邦王国の一つとして存在するようになりました。
誤解を恐れずいえば、表向きはイギリスに支配をゆだねている国ということになっています。つまり、連邦に加盟している国々は王国であり、その最高権力者がイギリスの王さまというような構造になっているのです。
みんなの共和国
イギリスのような君主国の反対の意味として扱われるのが「共和国」です。
国王や貴族がいない状況で国民が選んだ代表によって国の政治が行われることを共和制と言います。国民に選ばれた大統領など政治をおこなうリーダーはいるけど君主は存在しないということです。
フランス共和国や中華人民共和国のように国の正式名称に共和国(Republic)が付いている国の場合、一目で共和制をとっていることがわかりますが、アメリカやインドのような国名に共和国が付いていない国も共和制となっています。
アメリカをはじめ「共和制」をとっている国の元首は、大統領であることがほとんどです。大統領は選挙で選出されますが、大統領制をとっている共和国の場合、大統領は議会から独立して行政の任を負うことができるため、大統領の権限は強くなっているのです。
共和制の国のなかには「大統領」と「首相」の両方が存在している国もあります。フランスや韓国のように大統領と議会が権限を持っている国では「実質的な権限を持つ大統領」と「内閣のトップである首相」がともに行政の機能をもつ体制をとっているのです。
その一方でドイツやイタリアでは、実際の政治権力は首相が握っていて、大統領は国家元首ではありますがあくまで「儀礼的な存在」です。ドイツの大統領は、国民の選挙ではなく国会議員や州議会議員による選挙で選ばれます。ちなみに中国では国家主席が大統領の権限をもち、首相にあたるのは国務院総理です。
今と昔の共和制の考え方
さて、現在多くの国で採用されている共和制ですが、実は昔の共和制と現在の共和制ではその中身は大きく異なります。
共和制が今のような考え方になったのは、1776年にアメリカがイギリスから独立して新しい政治体制を作った頃からです。
それまでの一般的な共和制では、貴族によって政治が行われる「貴族共和制」を採用していたのです。貴族共和制とは国民が国を支配する権限を持っているのではなく、あくまで少数の貴族たちによって国が支配される体制のことです。
このため、今のように国民が主体となって選挙を行ういわゆる本当の意味での「民主制」は行われていませんでした。
しかし、独立したアメリカにはそもそも貴族がいなかったので、国民の中からリーダーを選ぶことがごく自然な流れでした。そのアメリカの政治がうまくいくようになると、他の国でも共和制と民主制が融合する流れができはじめました。
1789年にはフランス革命が勃発し、その影響でフランスが共和制となりました。その時の共和政国家自体はナポレオンが帝位につくまでの短い期間しか続きませんでしたが、それでも世界各国に非常に大きな影響を与えます。
その後、実際に共和制が増え始めたのは二度の世界大戦がきっかけです。
この大戦でドイツ、オーストリア、ロシアなどの君主制が崩壊すると、戦後独立したヨーロッパの国々はその多くが共和制となりました。
その後、イタリアや東欧諸国で君主制が廃止されるようになると共和制国家はさらに増加していくことになります。
そして戦争が終わったことでアジア・アフリカを中心に植民地の独立運動も盛んにおこなわれるようになっていきます。これらの国も共和制をとっています。植民地は支配されてきた期間が長かったので「独立するタイミングでは新たに国民中心の政治運営をしていくべきだ」という機運が高まっていたのです。
「共和制」と「民主制」の違い
このように国民によって選ばれた代表が政治を行うのが「共和制」ですが、共和制であれば民主制であるとは限りません。
「民主制」で重視されるのは人民によって政治が行われるという点です。この民主制の元となっている理念が民主主義です。これは国民の多数決によって物事を決めるという考えのことです。
民主制は国民が直接政治を行う直接民主制と、国民が選んだ代表者が政治を行う間接民主制に分けられますが、現代では間接民主制を採用している国がほとんどです。
ですから共和国の中には、民主制ではなく貴族や軍人のような一部の人たちが国を運営するスタイルが存在します。たとえば、中国や北朝鮮のような独裁的な政治を行う国も、国民によって選ばれた人がトップになる場合は「共和国」と呼ぶのです。
日本の国号は?
「それなら僕たちの日本はどうなの?」と思う人もいるのではないでしょうか。
日本にあえて国号をつけるなら「日本国」となります。かつては「大日本帝国」という名称で、天皇を国家元首とする君主国のようなかたちで国号としても「帝国」が使われていました。
現在は、憲法上ではあくまでも天皇は「象徴的な存在」であって、国の運営は国民から選ばれた議員によって行われています。
ただ、他国の国家元首が訪れる際には、国の顔として天皇陛下が対応するので、他国からみれば国家元首は天皇だとみえるのです。
それでも、日本はあくまで「日本」です。島国としてその独自の道を歩んできたというわけです。
まとめ
今回は国号についてお話してきました。
国号は誰が国を動かす権利をもっているのか、政治を行う権限がどれほどあるのかで決まっています。
王国や公国、共和国に合衆国や連邦と様々な国号がありますが、同じ国でも時代の流れによってその名称や政治体制は移り変わってきました。日本もかつては植民地をもつ「帝国」でしたが、いまではその方針も変わりました。
これは戦争や革命、植民地の独立など…その国に住む国民ひとりひとりの想いが重なっていった結果ではないでしょうか。歴史を変えるのはいつも人です。
だからこそ自分にとっては何が理想なのか、価値観を磨いていくことはとても大切なことなのです。それは日々学ぶことによって得られるものだと僕は思います。
これからもそういったことを学びたいと感じて頂けたら
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ということで、今回は以上です(^^)/