ロシアがウクライナに侵攻したことで、世界各国はロシアに対する経済制裁を発動しました。
戦争を続けるには、なんといってもお金がかかるので、経済がダメージを受ければ戦争を続けることは難しくなります。
国が不景気になったりしても、それに対応するために政府は何かとお金が必要です。
税金だけでお金が足りない時は、いわゆる「国の借金」をしてお金を手に入れるのですが、実はロシアがこの借金を返せなくなりそうだという話が出てきました。
この国が借金が返せなくなることを「デフォルト」と呼びます。
果たして先進国であるロシアでそんなことが起きるのでしょうか?そもそもデフォルトとは一体何なのでしょうか?
そこで今回の記事では、ロシア財政をみながらそもそもデフォルトとは何かをわかりやすく解説します。
最後までご覧いただければ戦争の背後でロシアがどうなっているのか理解できるようになり金融経済リテラシーが高まること間違いありません。
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動画でもわかりやすく解説!
Contents
ロシアが直面するデフォルト
「国債」という言葉をニュースなどで聞いたことがあると思います。これは国がお金を借りた時に出す、いわば「借金の証明書」のようなものです。
この国債を持っている相手にはお金のレンタル料である「利子」を払うことになります。この国債の返済をロシアが出来ないかもしれない…と今世界で問題になっているのです。
これは、ロシア国債の「格付け」がどれくらい低くなったかを見ても分かります。
格付けというのは、お金を貸す側から見た時に「貸す相手としてどれくらい信用できるか」というランク付けのことです。
この格付けを行う大手企業の「S&Pグローバル」は、今年の3月3日にロシアの格付けを下げると発表しました。
具体的には「BB+」から「CCC-」への格下げで、これは8段階も下げたことになります。
同じように格付け会社の「ムーディーズ」もロシアの格付けを下から2番目の「C a」に引き下げると発表し、これは「デフォルト一歩手前」を意味するものです。
その他の格付会社も「ロシアはデフォルト寸前である」と評価していることから、かなり問題視されていることが分かります。
ロシアは世界でも主要国として知られていますが、そういった大国がここまで低い評価を付けられるのは極めて異例なことです。
格付けが下がった理由は
なぜ、これほど急にロシアの格付けが下がったのでしょうか?
もともとロシアがウクライナと戦争を始めるまではロシアの景気は上昇傾向でした。
新型コロナの影響で2020年は不景気に陥りましたが、その後は経済の調子を取り戻していたのです。
また、ロシアはエネルギーを外国に売る立場でもあるので、最近起こった世界的な原油価格の高騰では、むしろ儲けがでるほどでした。
ところが、ウクライナに攻め込んだことで世界中から非難されその直後に「SWIFTから排除する」という経済制裁を受けます。
これは簡単に言えば「外国と金融取引ができなくなる」ということです。
ロシア国債は、全体の2割くらいを外国の人が買っているのですが、ドルで買った人と、ロシア通貨であるルーブルで買った人に分けられます。
SWIFTからの排除によって、ロシアはドルを用意できなくなったので、ドルで借りていたお金を返せなくなりました。
その上、経済制裁の影響でルーブルはそれまでの半分の価値になっています。
つまり、ルーブルでロシア国債を買った人は、この時点でお金を半分も損したことになるわけです。
その上、ルーブルでロシア国債を買った人に対しては「一時的に利子を支払うことを停止する」とロシアの中央銀行が発表しています。
これが格付けが一気に下がった大きな理由となっています。
また、返済期限が迫っているドルの国債についてもロシアは「ドルではなくルーブルで払う」という決定を下します。
これはお金を貸した側にとっては、貸していたものの半分しか返ってこないのと同じ意味なので、たまったものではありません。
ロシアにドルが用意できない以上は、利子も払いようがないのでこのまま期限を迎えれば返済ができなくなります。
こういったことから「ロシアは借金が返せなくなる」という見方が広がり、デフォルトの可能性が高いと言われているのです。
格付けとは?
さて、先程「ロシア国債の格付けが下がった」というお話をしましたが、こういった「信用できる・できない」というのは、そもそもどういうことなのでしょうか?
格付けというのは国債に限らず、国・自治体・会社などがお金を借りる時に証明書として出す「債券」のランク付けです。
ランクが高いほど「お金を貸しても安心だ」という意味になり、逆にランクが低い場合は「お金を貸したら危ない」という意味になります。
ランクが高く安心できるとお金を貸す人も集まりやすいので、お金を手に入れやすいということになります。
また、この格付けは「利子の大きさ」にも影響します。
信用が低いとお金が返ってこない可能性が高いので、貸す人はそのリスクに見合うたくさんの利子を要求します。信用が高ければ逆に少なくてすみます。
だから格付けは高いほうが良いとされるのです。
こういったランキングは、世界に何十社もある民間企業がそれぞれ独自に発表しています。
なので分析方法によって多少の差があります。ただ大きな違いが出ることはあまりなく、その国がどれくらい信用できるかを知るための参考指標になっています。
なお、多くの格付け会社で「最も信用できる」とされているのは9カ国ほどあり、ドイツ、オーストラリア、スイス、シンガポールなどです。
日本はというと24番目くらいで、昔よりは下がってしまいましたが、まだ安全な方と評価されています。
逆に危ないとされてきたのがアルゼンチンです。実際に2002年に借金が返せなくなり、その後も10回近くデフォルトを繰り返しました。
ロシアは今、そのアルゼンチンよりもデフォルトする可能性が高いと見られています。
でも、このデフォルトにも3つの段階があります。
まず、利子やお金の返済を先延ばしにする「履行遅延」があります。これは期限までには払えないけれど、待ってもらえば払えるという状態です。
貸した側にとっては困るけれど、まだマシという程度でしょう。
その次に、利子だけ払えなかったり、借りた金額の一部しか払えないという「不完全債務」になります。
そして、全く何も払えない「履行不能」が最も深刻なデフォルトです。貸した側はお金を丸ごと失うので、これが原因で会社なら倒産する可能性もあります。
デフォルトが起きる時は、当然その国の経済も大変な状況になっています。
実際どうなっていたのか、2010年に始まった「ギリシャ危機」を例にみてみましょう。
崩壊したギリシャ経済
問題となるギリシャは、南ヨーロッパに位置する小国です。ヨーロッパの政治・経済の同盟である「EU」の加盟国で、2001年からEUの通貨である「ユーロ」を使っています。
このユーロはドイツにある中央銀行だけが発行でき、ギリシャはそれを借りて経済を回すわけです。
そんなギリシャが2009年に政権が代わった時になんと前政権が巨額の財政赤字を隠していたことが明らかになります。
ギリシャは経済規模が小さく、通貨も発行できないので、自力では解決できません。そこでEUに助けて貰おうとするのですが・・・ここで問題が発生しました。
EUはギリシャに対して厳しい姿勢を見せたのです。その理由は「この危機はギリシャの自業自得だ」と考えていたからです。
例えば、ギリシャでは働いている人の5人に1人が公務員で、かなり高い給料を貰っていました。社会保障も手厚く、55歳から貰える年金は働いているときとほとんど変わらないという超高額です。
その上、脱税が当たり前になっていて、多くの国民は「脱税は権利」とまで主張します。
そんな国民の人気を得ようと、前政権が財政赤字を隠してまでお金をばら撒いていたのが危機の原因でした。
それにもかかわらず、当のギリシャは「たぶん大丈夫だろう!」という楽観的な予想で財政再建の計画を立てます。
その財政計画を見た格付け会社は「これは実現できない…!」と判断し、ギリシャ国債の格付けを下げだしたのです。
するとギリシャ国債の価値はいっきに暴落し、ギリシャにお金を貸していたドイツの国債もとばっちりで下落、そしてユーロの価値まで急落します。
こうしてギリシャ発の経済危機は、EUを巻き込む大事になっていくのです。
EUはギリシャを助けるため、大金を出して支援することを決定しますが、その条件としてギリシャ政府に厳しい財政再建を求めました。
ギリシャはその条件を受け入れたものの、ギリシャ国民はそれに猛反発します。
国民にとって負担が大きい内容だったので、働いている人の半分以上が抗議デモに参加し、死者が出るような暴動も発生しました。
大混乱の中でギリシャは財政再建に取り組みつつも、お金を返すためにお金を借りるというまさに自転車操業です。
再建はなかなか進まず、助けて貰うには「さらに厳しい条件」を呑まなければいけなくなりました。
それをギリシャは「受け入れることができない」と判断したことで、2015年にデフォルトが確定しました。
このデフォルトは、支援金の返済までできなくなるという先進国では初めての例でした。
その後、EUはギリシャに厳しい財政制限をかけ、国民が1日に引き出せるお金は60ユーロ(日本円で8,000円)までということにもなりました。
そうして2018年にようやく危機を脱したとされています。
ギリシャの財政自体は立ち直りましたが、実態経済がダメージを受けたことでたくさんの人が失業し、今でもギリシャの若者は4割近くが失業状態になっています。
このように1つの国がデフォルトに直面すると、国内外に多大な影響が及ぶのです。
では、今のロシアがどうなのかというと、同じデフォルトでも少し事情が違うようです。
ロシアの財政は?
ギリシャはもともと巨額の財政赤字を抱えていましたが、ロシアの財政は健全で、金融制裁がなければ十分に返済する力を持っています。
また、ギリシャは外国からの借金が大半でしたが、ロシアの場合はこれが2割程度です。
しかもその2割は世界全体の3%くらいの規模なので、世界に与える影響はそれほど大きくないという意見があります。
その上、ロシアは自分の国で通貨を発行できるので、極端な話をいえばルーブルをたくさん発行し借金を返すこともできます。ここも自国ではどうしようもなかったギリシャとは大きく違う点です。
ただし!
ロシアの通貨ルーブルは価値が大きく下がっているので、発行したところで欲しくない人が多く、根本的な解決にはなりません。
それに金融制裁が長引けば「お金はあるのに支払えない」という状態が続くので、支払い期限が来ればデフォルトが確定します。
そうなればルーブルやロシア国債はさらに価値が下がるので、ロシア経済は致命的なダメージを受けることになります。
ロシアは「3年以内に8割の確率でデフォルトする」とも予想されていて、ロシア経済の先行きは暗いと言わざるを得ません。
戦争の武力ではなく、経済が原因でロシアが倒れる可能性もあるわけです。
軍事力だけではなく、戦争の裏側で起きている経済問題によっても、ウクライナ情勢には大きな変化があるのです。
ですから世界情勢と経済、そして僕たちのビジネスや生活までがすべて密接につながっているのです。
世界で起きていることを学ぶことは、大きな意味があることです。
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ということで、今回は以上です(^^)/